音響効果とは?
TVアニメーションをはじめ、劇場作品、CM、ゲーム、外画吹き替えなど、幅広いジャンルに渡る映像作品を引き立てる『効果音』、いわゆる音響効果制作業務を行っているちゅらサウンドが広く人材を募集します。
募集するにあたって、あらかじめ仕事の流れや現場の雰囲気を理解してもらうために、応募者向けのインタビューを行いました。
ちゅらサウンドの役員である森川氏(代表取締役)と野崎氏(取締役)のお二人から、今の仕事に就いた経緯ややりがい、日常業務のこぼれ話などをお伝えします。
(取材・文/K.KITAUGUCHI[JOLLS INC.])
音響効果の仕事に就くまでの経緯を教えてください・・・
お二人方のこれまでの経歴を教えて頂けますか?
野崎:
二十歳で専門学校を卒業したんですが、通っていた専門学校は東京デザイナー学院の姉妹校である九州デザイナー学院で、アニメーション科出身です。そこで絵の勉強していました。
音響効果とは全く関係のないことをやっていたのですか?
野崎:
そうですね。全く関係ないことをやってました。でも、小さい頃からずっと録音とか音をいじることも大好きだったんで、どうせなら絵も音もまとめてできるようなことないかなと思って探したのが、二十歳で就職した録音のスタジオだったんです。でも、そこのスタジオに入っていろいろやってたんですが、どうも自分のやりたい音の方向とは違うなと、もっとなんか自分のやりたいものを作れるようなことないかなという思いから、2年でそこのスタジオを辞めまして、それでこの音響効果の仕事を見つけました。
その2年間やっていたスタジオというのは音響効果の仕事に似通ったものだったのですか?
野崎:
アフレコスタジオだったので役者さんの声を録っていました。たまに音楽の編集もやったりはしたんですけど、今の仕事とはちょっと違う方向というか。
なるほど。では、音響効果として初めてやった仕事は何ですか?
野崎:
一番初めにレギュラーという形でやったのは、NHKのこども番組です。人形劇でした。今はアニメが多いですけどね。東京出てきて計7年目でやっとアニメの効果をやれるようになっという感じですか。
森川さんはどういうきっかけで?
森川:
そうですね。私がまだ学生の頃、ちょうど18才のときに、音響効果の会社にアルバイトとして入りました。
専門学校のような技術系の学校に通っていたわけではないんですね?
森川:
通ってないです。当時、短大の家政科に通っていました(笑)。バイトの頃、最初の1年は学校があったのでたまにしか行けなかったんですけど、行ったとしてもほとんど見学、もしくはお掃除してました(笑)。それから1年後の夏休みにアルバイトを長期で出来るときがあったので、その時に、お昼の連ドラの収録に音響効果担当として連れて行ってもらってました。
ドラマ収録の現場に行くということですか?
森川:
そうですね。学校を卒業するまではそんな風にアルバイトとしてやってました。学校を卒業して、そのままその会社に就職したという流れです。
いつから、どのようなきっかけで音響効果の仕事をやろうと思っていたのですか
森川:
それは高校の時に思っていました。やっぱり映画が好きだったからですかね。
映画を見ているときに、ストーリーも見ながら、効果音にも興味があったということですか?
森川:
そうですね。
先ほど野崎さんはもともと絵の勉強をされているとおっしゃっていましたが、どうして仕事に選んだのは音なんでしょうか?
野崎:
学校出るときは音を仕事にしようと決めていました。そもそも、何か作品を作る世界に行きたいなというきっかけでアニメーション科がある学校に入ったんです。映像を作るという意味では、アニメーションは総合的なことが勉強できるだろうと。絵の構成だとか、最終的な仕上げに至るまで、映像表現の全てが詰め込まれているだろうということでアニメーション科で勉強しようと思ったんです。それで、学校でいろいろ知識つけていく上で、作品を完成するまでの作業がかなり細分化していることに気付いて、それで自分に合っているのはと考えたときに、音だと思ったんですね。
森川さんは何か音響効果の仕事を選ぶことになるきっかけはありましたか?
森川:
小学校の頃の話なんですけど、国語の授業で台本を教材にしたカリキュラムがあって、読みながら音も作って入れたりしてたんです。そのとき、これは凄く面白いなと思ってました。その後も映画とか見ていくうちに、こういう仕事が自分に向いているのかなと思ったんです。たまたま親戚に音響監督やっている人がいて話をしてみたら、私がやりたいのは効果音だなって分かったんです。
野崎:
進んだ学校だね。そんなインタラクティブな授業があっただなんて珍しいね。あっ、でも学校の先生の影響っていうのは大きいですよね。僕も小学校の時の音楽の先生には影響受けてますから。子どもの頃に出会ってる人の影響って大きいですね。音楽の授業で、教材の楽譜にないビートルズの曲を、リコーダーとかピアニカとかを使って演奏したりだとか、そういうことからの影響はやっぱりあると思います。その先生に出会って、自分の好きになるベクトルっていうのが変わったと思います。
音響効果の仕事に就いてみてどうでしたか?
仕事を始めた頃、どんなことで苦労されましたか?
野崎:
とにかく出来なきゃついて行けないっていう世界だったんで、そういった意味では苦労しました。僕は他の業界を知らないので、仕事のペースとか仕事の量に関しては、これが当たり前かなと思ってました。だからハードな仕事だということに関して、特別ストレスを感じたことはないですけど、いざ自分を振り返ってみると今もずっと苦労しているのかなっていうのはあります(笑)。
「この仕事やっていける」と自分で判断できたのはいつ頃?どんなきっかけですか
野崎:
正直、今でも「やっていける」って思っていません。来た仕事に対して、ひたすら誠意を持って取り組むことだけを考えています。総合的に評価を得られれば、次の仕事に繋がるわけですし。
自分なりの仕事に対する評価ポイントはありますか?
野崎:
僕の場合は、一番最初のお客さんはクライアントさんだと思っているので、現場にデータを持って行って関係者だけで初めて聞く時、背後でクライアントさんが笑ったら「よしっ」って思いますね。一番最初のお客さんであるクライアントさんが笑ってくれたり好印象なリアクションをしてくれれば、ああこの方向性でいいんだと思います。たまに、やりすぎですって言われるときもあるんですけどね(笑)。
一連の作業の中で一番気を遣うのはどの行程ですか?
野崎:
僕は選曲の仕事も一緒にやってるんで、監督の意向にすごく気を遣いますね。そのキャラクターの気持ちの置き方について、監督はどういうものを求めているのかという点は気にしますね。絵コンテや台本から得られる情報を整理する読解力が必要になってきますね。
森川:
やっぱり監督のこだわってるポイントを探ることですかね。作業しながら分からなくなると監督に電話して聞いたりすることもあります(笑)。
ちなみに、他社の手がける番組や作品を見ることはありますか?
野崎:
僕は暇があれば見るようにしています。時には新たな発見もあったりするのと、一応知識としてどなたがどんな仕事をやっていらっしゃるのかを見ておくようにしています。この仕事は、他の人の現場に立ち会うことは滅多にできないので、オンエアやDVDという形で勉強させてもらったりしてるんです。作品によってはパロディーを取り入れたりすることもあるわけで、その時に元ネタを知っておかなければ(笑)。
実際にどんな仕事をしているのか教えてください・・・
仕事の流れについて教えてください。
森川:
仕事の依頼を音響監督や音響制作の方から受け、まずは絵コンテをもらいます。絵コンテを見てストーリーの理解をしつつ自分なりにお話に合った音のコンセプトをイメージします。次に監督と細かく打合せをするのですが、その時に演出側の意向も聞いておきます。
打ち合わせの後はどうですか?
森川:
打ち合わせと平行して、音響制作サイドではアフレコ作業を行っています。この部分は音響効果の作業とは実質的に区分が違います。アフレコに合わせてとりあえずの絵も完成します。そのタイミングで絵を貰って音作りや音付け作業が始まります。基本的には、音が一切付いていないビデオに効果音を付けていく作業になりますが、最近は録音さんのご厚意で台詞が入っていることが多いです。まずは、私の場合、最初に映像を見てどんな音が必要かタイミングと種類を全てチェックしてます。平行して、登場人物が立ち上がったり歩いたりする、業界では「生音」と言われるいわゆる生活音をつけるためにブースに入って録音します。
つまり、実際に映像を見ながら音で演技するということですね。
野崎:
そうですね。生音を付けつつ、街のノイズとか森の小鳥とか海辺みたいないわゆる環境音と、ウチでは単発って言い方をしてるんですけどいわゆる爆発音とか魔法の音とか付けていきます。生音と環境音、単発の音付けの順番は特に決まっていないのでスタッフによってさまざまですね。
その後の仕事の流れはどうなるのですか?
森川:
効果音を全て入れ終わると、外部のスタジオでの作業になります。ダビングとかMA(エムエー)とか呼ばれています。そこで、アフレコした台詞と音響制作の方が手配した音楽、ウチが持っていった効果音を一斉に出してバランスを調整します。音楽業界でいうトラックダウンの作業と同じですね。
野崎:
現場では音楽や台詞との兼ね合いや演出意図で音を取り替える作業も発生します。そういう時に、現場で素早くきちんと対応できるスキルも重要です。
新人さんが最初に担当することになるのはどんな作業でしょうか?
森川:
まずは仕事の流れに慣れてもらいたいので、少しずつでもいいので機材に触れてもらいたいですね。最低限、機材の扱いに慣れてから、出来そうなことにどんどん積極的に挑戦して行って欲しいです。
一番最初の具体的な仕事は?
野崎:
録音した生音を絵に合わせるという作業ですかね。絵を見ながら演技するので、若干のタイムラグが発生します。それをジャストなタイミングに合わせる作業をお願いすることになると思います。
森川:
それに慣れたらブースに入って絵に合わせて生音を録音する作業ですね。生音は演技もそうですが使う素材選び、マイクのポジションなんかが難しいので、一緒に作業しながら徐々に慣れていって貰う感じでしょうか。
社名の由来はなんですか?
「ちゅらサウンド」についてお聞かせ下さい。社名の由来を教えて下さい。
森川:
ご存じの方も多いと思いますが、「ちゅら」は沖縄の方言で「美しい」という意味なんです。
野崎:
この「ちゅら」の響きが可愛いし意味も美しいということなのでこの言葉は使いたいと。それで「美しい音」という意味で「ちゅらサウンド」に決まりました。
じゃあお二人が沖縄出身であるわけではないんですね?
野崎:
全然ないです。老後に住むなら沖縄がいいなくらいです(笑)。
音響効果の仕事を目指している人へのアドバイス
これから音響効果の仕事に就こうとしている人に何かアドバイスはありますか?
森川:
2~3年先の自分の未来像をシュミレーションして、そこに向かって今何をすれば良いのかを考えて仕事に取り組んでいって欲しいですね。
野崎:
とにかくいろんなことに感覚を鋭くアンテナを張っておいて欲しいです。それは音響効果だけの話だけじゃなくて、情報を手広く素早く受信できるような人になってもらいたいと思っています。
最後にこの仕事のやりがいについて教えてください。
野崎:
身内だとか親戚に「見たよ」と言われるのが最初に一番嬉しいことになるのかなと思います。小さな応援で意外に勇気付けられたりします(笑)
森川:
1年に1回仕事を終わらせて、旅行に行くこと! 制作さんたちにもそれがバレていて、「これが終わったらどこどこに行ってもいいから」みたいにハッパ掛けられることもあるくらい(笑)。
応募を考えていらっしゃる方に何かコメントがあったらお願いします。
森川:
気力、体力ともに充実してる方待ってます!
野崎:
想像力の豊かな人や、柔軟な発想ができるような人に来てもらいたいです!
お二方ともありがとうございました。
※2007年2月収録